昨年末のことになるのですが、CAI02で開催中の石倉美萌菜 個展『やることやりたいことやんなきゃなんないこと』を見てきました。
mimona-dm
会場でも見れるこちらのブログ『前世に因縁つけて(恋愛の)一念発起した話』は、ぜひ先にご覧いただきたいのですが、
10月3日にスタートして12月まで綴られる内容は、祖先に女力士がいるらしい福子さん(=作家)が、男の人への苦手意識&彼氏ができないのはその女力士のせいでは?と思い至り
(自分の前世がその女力士で、彼女の経験からくるトラウマが現世の自分に影響しているのでは、という)
その呪縛から脱出すべく(=彼氏をつくる)、友人とルームシェアをしたり、ダイエットをしたり、婚活をしたり、出会い系アプリを使ってみたり
お酒の力を借りながらさまざまな困難を克服し、めでたく婚約にこぎつけるまでの話で、祖先の住んでいた場所へ訪れて女力士に報告する辺りで終わりを迎えるのですが。
ここまではブログのストーリーで、
会場では並行して、祖先の地へ訪れ、女相撲に関して調べた過程なども展示。

私は会場中央に展示してあった刺繍作品の中の一言
「これじゃダメなのか?」
に、えらくグッときました。
美萌菜さんのダイエットの記録をモチーフにした過去作とか、作家のコンプレックスとそれをなんとか克服しようとあがく様が丸ごと作品になっているのはこれまでもあったけど、
体型や恋愛のことを超えて、
作品を制作するモチベーションや作家としての力量、といった「作家としての自分」に対する不安と
恋愛によって満たされる気持ちを味わいつつある「一女性としての自分」
の、間の葛藤が、この一言に素晴らしく凝縮されており。
(でも、もっと突っ込むと、「もしかしたらずっと追い求めてきた恋愛で満たされないかもしれない」というほのかな不安、そこから発生する新たなコンプレックスに対する予感も感じられるところがいい)
多分、自分も含めて、誰でも何かしらの拭いがたいコンプレックスを抱えており、克服できる人もいれば、コンプレックスと和解してそれなりの向き合い方を見つけた人、あるいは常に葛藤している人などそれぞれだと思うのだけど、
そういった人たちにとって、布に一針一針縫い付けられた「これじゃダメなのか?」という言葉は、やっぱり胸にくるものがあるんじゃないのかなあ。
いつかの自分を突きつけられているみたいで。
(私にとっては、「いつか」どころか、あまりに現在進行形の自分すぎて、うっかり涙ぐんでしまい慌てた…。)
刺繍ならではの、文字のたどたどしさが、またいいんだよな。あーあ。
ちなみに「作家としての自分」と「一女性としての自分」の対比は、そのまま展示構成(前者が壁面展示、後者がブログ)にも当てはまり、その葛藤がそのまま中央の刺繍作品に集約されるってところも素晴らしい。
その意味で、現状に対する「これじゃダメなのか?」という問いに対しては、「多分自分で、だめだという答えを出すだろうね」と、思ってしまう私。
茨の道に踏み込まざるを得ない人、好きです。
ということはさておき、
1/14(土)19時からはトークイベントもあるので、ぜひ足を運んでみてください。(※1/7追記:トークイベント、なくなったそうです!)
※ギャラリーは9日から営業
(編)

 

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