札幌でアーティスト・イン・レジデンス(AIR)事業を行なっている「S-AIR」の事務局を、2017年度からしています。

実は2015年度からS-AIRとの関わりはあったのだけど、それまで全く縁のなかった「助成」という仕組みや、国の文化政策などを勉強する機会は逃し続け、事務局1年生の2017年も目の前のことをこなすのに必死であっという間に経過。

少しずつこの辺のことを勉強していかないとねってことで、まずは自分的に一番興味深く読めそうな『セゾン文化財団の挑戦 誕生から堤清二の死まで』を。

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そもそも、「財団」というものについてもよくわかってなかった自分の1冊目として、とても良かった。

助成財団センターの団体要覧紹介ページを見ると、今のところ日本に1444の民間助成団体があるのですね。(アメリカの現在の正確な数はわからないけど、96年時点で11,600団体。桁が違う)

で、本書。

最初の方で、セゾン文化財団設立後、事務局に事業担当者4名が加わった時、助成プログラムを立案し、運営し、成果を評価する専門職として、彼らの肩書きを「プログラム・オフィサー」としたエピソードが紹介されます。

当時、この肩書きを採用しているのはトヨタ財団と笹川平和財団くらいだったそうです。その理由として、日本の助成財団に、自然科学の研究に対する助成を主目的としたものが多かったと。

(研究者じゃないと上記のことがわからないため、結果事務局の仕事は事務処理だけ、ということになり、専門職として創意を発揮する場面がない。)

そして、2018年度のセゾン文化財団のプログラム構成は以下の通りなのですが、(公式サイト参照

<助成事業>

Ⅰ現代演劇・舞踊助成「芸術家への直接支援」

①ジュニアフェロー、シニアフェロー ②サバティカル

Ⅱ現代演劇・舞踊助成「パートナーシップ・プログラム」

①創造環境イノベーション ②国際プロジェクト支援 ③芸術交流活動(非公募)

Ⅲ現代演劇・舞踊助成「フライト・グラント」

<自主製作・共催事業>

自主製作事業 セゾン・アーティスト・イン・レジデンス

共催事業 英語ワークショップやコミュニティダンス・ファシリテーター養成スクールなど

——–

本書ではこの助成事業の柱や、自主事業を形成していくまでの試行錯誤が語られて、とても興味深かった!

評価についての章では、筆者がジョンズ・ホプキンス大学の政策研究所のシニア・フェローとして半年間米国に滞在し、芸術への助成プログラムの評価についてリサーチしたことが紹介。

各財団とも、芸術文化の領域では試行錯誤の段階でありながら、共通しているのは「芸術助成は科学の実験とは異なるものだから、評価においても方法の厳密さや一貫性が第一義ではない。複数の方法を合わせ、フレキシブルに取り組むのが良い」という認識だったと。

「芸術的なプロジェクトは、いわば物語の集積なのだから、まず何が起こったかを虚心に見て、そこにどのような価値が見出せるのかを考えても良いのではないか」と片山氏。

ただ、比較的新しい大型財団については、成果重視というか、投入した資源に対してどれだけのリターンを得られたかを問題とするビジネス的な姿勢が顕著だった、という指摘も。

その結果として組み立てた、セゾン文化財団の(対象プログラムを絞った)評価手法も書かれてました。

あとは、呼ぶも行くも日本側が負担することが主流となっていた「舞台芸術の国際交流のあり方について」の問題意識も。

それについて一石を投じるため、日本の芸術を「呼んでくれる人」を作っていくためのプログラムを考案したこととか。(これが「セゾン・アーティスト・イン・レジデンス」につながっていく)

あー、舞台芸術専門の民間助成団体であるセゾン文化財団。いいなあ。

※2010年の記事ですが、片山氏がネットTAMに寄稿している「だれがどんな助成をしているのか?」も参考にどうぞ。

そして、後追い必要な文献もめっちゃ出てきて、追いつけるのかな…

日本の文化政策の歴史もおさらいしないとなー。

あー、こういうことを一通り勉強した後に、昨年末の評価委員会に挑めればよかった…あれはあまりに突貫工事すぎて、悔やまれます…

2年くらい前から、いろいろ体験しながら少しずつ「自分が本当に情熱を注ぎこめるもの」にチューニングを合わせていく作業をしているのだけど、

本書を読みながら、ノイズだらけのチューイングではあるけれど一瞬どこかとクリアにつながったような感覚を覚えたのでした。

2年前はあまりに未知の世界で無知だったけど、少しずつ見えてきたぞー

(編)

 

 

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