まずはThe Old Vic『Mood Music』。

キャリアも名声もある男性ミュージシャン兼プロデューサーが、初のシングル・ヒットで注目を集めた若い女性シンガー・ソングライターに目をつけて、アルバムを共同制作。

その中から賞も受賞するヒット・シングルが生まれるのだけど、その曲に女性シンガー・ソングライターがクレジットされなかったことから、訴訟問題へと発展するお話。

曲の生まれるきっかけが、女性シンガー・ソングライターがスタジオで爪弾いたメロディーだったとして、そこから男性が歌詞付とアレンジしたものに都度女性が意見をして作り上げた曲、の制作者としてクレジットされるのは、果たして男性だけなのか?というところで、両者の意見が割れるのですが。

業界の中で権力を持つ男性とキャリアの浅い若い女性、という構図も加わりつつ、しかし女性シンガー・ソングライターは男性を尊敬してもいるんですね。

なので、共同制作の声がかかった時もとても喜んだし、アルバム創作過程で充実した時間も確かにあった、ということをセラピストに話すのだけど、セラピストは音楽やミュージシャンへの興味は特になく、シンプルに彼女を分析しようとし、そこにも彼女は反発するわけです。

男性ミュージシャンの方もセラピストといろいろ話すのですが、人格的に問題ありな発言が続出。女性シンガー・ソングライターについては「自分のアルバムを完成させるためのツール」と話し、他者への共感性は全くなし。

作品と作り手の人格は切り離して考えるものだと思うけど、背景に倫理的な問題がある場合、その作品の評価もそれとは切り離して考えるべきなのか…という、これまたホットな問いも投げかけつつ。

ショービジネス(だけに限らないかもですが)の世界は、繊細な心を持つ者がやはり負けるのか…という気がしなくもないけれど。最後の方、ちょっと頭が疲弊してて英語処理能力が追っつかないまま終わってしまったのですが、レビューを見ると、やっぱりこれといった解決は見せずに終わったっぽい。

次。

National Theatre at Homeで『Amadeus』

全編はこちらから見れます。24日(金)3:00amまでの公開。

オーストリア皇帝に仕える宮廷楽長アントニオ・サリエリを、タンザニアにルーツを持つイギリス人俳優ルシアン・ムサマティが演じており、「カラー・ブラインド・キャスティング(白人以外の俳優が白人の役を演じること)」の面でも話題になったそうな。

(ちなみに非白人の役を白人俳優が演じることを「ホワイト・ウォッシング」と言い、こちらはもう見かけることがなくなったような。)

そして「ブラインド・キャスティング」は肌の色だけでなく、年齢や人種、ジェンダーに関しても使われる言葉で、最近、81歳の俳優がハムレットを演じた時にも話題になったようです。

で、Guardianのルシアン・ムサマティへのインタビューでも「ブラインド・キャスティングについてどう思うか?」と聞かれているのだけど、彼は「ブラインド・キャスティング」という考えの中には、「私たち(この文脈だと西洋の白人)にあるものを、あなたが持つことも許す」という暗黙の理解があることを指摘していて。

でも、それよりも前に重要なこととして、「想像力の遊び場である演劇は、あなた(この文脈だと西洋の白人)だけでなく、私たちのものでもある」と。そして何よりも、「ブラインド・キャスティングという言葉で私を論じるのではなく、私自身を見てほしい」と話していて、印象的でした。

いやー、勉強になるな…。『Les Blancs』でも、正しく振る舞うアメリカ人ジャーナリストに滲み出る「上から目線」への眼差しが容赦ないなと思ったけど、持てる者が公平さを説くときの上から目線問題…。

『Amadeus』のことに話を戻すと、音楽を愛するがゆえに、モーツァルトの素晴らしい才能に対して愛憎入り混じる感情を抱くサリエリの仕打ちはひどいのだけど、同時に哀れでもある。

ヨーロッパ楽壇の頂点に立つぐらいの人物なので(Wikiを見ると名教育家でもあったそうな)、サリエリだって相当な才能の持ち主だと思うのだけど、自身のことを「凡庸なパトロン」と言っちゃうんだもんなー。

強烈な光の側に立つと、それだけ自身の影も濃くなる。恐ろしや。

あと

劇中、大晦日のカウントダウン・パーティーの乱痴気騒ぎの中で演奏される交響曲第25番が、無 茶 苦 茶 格好良かった…!アレンジは入ってるけど、あれ、あんな縦ノリで跳ねまくれる音楽だったのか…。

全編動画の、52:12あたりからそのシーンなので、ぜひそこだけでも!

Stay Home期間中、素晴らしい作品を無料配信してきた「National Theatre at Home」も、本作をもって配信終了。いろいろなことを学べる、本当に良い演劇(カニかまぼこ)体験だった…。

また自由な海外旅行のできる日々が戻ってきたら、絶対ロンドンも訪れて、National Theatreで作品体験したい。行きたい劇場リストの、上位にランクインです。

(編)

 

 

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